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川島 宙 Kawashima Hiroshi
川島 宙
レストランテ・アコルドゥ
〒631-0076
奈良県奈良市富雄北1-1-1
TEL/FAX 0742-43-0222 http://www.akordu.com/
PROFILE
「ホテル西洋銀座」でフランス料理を修業。「レストラン麻生ガーデン」、「シャトー・ヴァン・デ・バー」、「京都センチュリーホテル」を経て、2004年スペイン・バスク地方の「ムガリツ」で料理の哲学を学ぶ。2008年奈良・富雄に「アコルドゥ」を開業。記憶に触れるモードスパニッシュを提供している。1971年東京都生まれ。

受賞のことば

 まだ若年であり、自分自身の調理スタイルに確信を持って取り組み始めてからの年月が決して長いとはいえない私に目を向けてくださり、感謝の思いでいっぱいです。また同時に、今後、より前向きに未来を見据え、前進していくための勇気をいただいた思いです。地域に根ざし、地元でひたむきに「食」と向き合う生産者の方々とのコミュニケーションをさらに深め、土地のポテンシャルを表現し、高めていけるような料理の提供に努めていきたいと考えています。

現地取材

“記憶”を呼び覚ます一皿

 初めて食べるのに、なぜか懐かしさが心を満たす。どこかで触れたことのある優しさや、何かで感じたことのある喜びなど、胸の内がふと潤むような記憶を呼び覚まされる。川島宙さんの料理は、店名の「アコルドゥ」が意味する通り、“記憶”のかけらを紡ぐ体験を、色で、香りで、味わいで提供してくれる。そうしたスタイルを確立するベースとなったのが、スペイン・バスク地方の名店「ムガリツ」での修業であり、日本の古都・奈良との縁だった。

あるがままを自由に表現するモードスパニッシュ

 雑誌に紹介された「ムガリツ」の一皿に魅せられ、川島さんは修業のために34歳でスペインへ渡った。シェフ自ら毎朝山へ入って手に入れる旬の食材を、まるで山の自然をそのまま皿に置くように、あくまで自由に、それでいてこの上なく洗練されたかたちで表現する料理に、川島さんは深く共感、自身の新しい表現方法を模索していく。 「ムガリツ」の料理がバスクという独特な歴史と文化をもつ地域やバスク産の食材への愛に満ち、それが世界の人々から高く評価されていることも川島さんを感動させた。帰国した川島さんは妻・友紀さんの実家に近い奈良・富雄に、バスクに代わり愛着を寄せる場所を見出した。

物語を提供する料理人

 川島さんは自らの料理をクラシックの「標題音楽(=情景、イメージ、物語などを音で表現する楽曲)」に喩える。感じたことのある海や森、雨や雪などのイメージを料理名に記し、地元の食材を使って譜面ではなく皿に表現。食す人は、その人自身の記憶に刻まれた、いつかどこかの情景に思いをはせながら、個々の感性で料理を楽しむ。 「そのひとときに集中できるよう、火を入れる時間を見計らい、盛りつけやサービスのタイミングに気を配ります」。料理をきっかけに各テーブルでさまざまなストーリーが展開していくのを手助けすることも、川島さんにとっては料理人の役割のようだ。

「農」「食」「生きる」が循環する理想郷へ

 奈良近郊には豊かな自然が広がり、その各所で人生をかけて「農」に取り組んでいる個人の生産者がたくさんいる。そうした人々とのつながりを深めるほどに、川島さんは旬や食への思いが共通していることを実感した。「少しずつしか発注できないのが心苦しい」と苦笑するが、「アコルドゥ」の知名度の向上とともに、生産者の方々に光が当たる機会は確実に増えている。 「農、食、そして生きるということが、地域の中できちんと循環することが望ましいと思います。その実現のために、もっと素材に近い田舎でレストランを展開できたら…」。未来への挑戦は、すでに始まっているようだ。

顕彰対象

 食材が育まれる地域の風景や、そこから連想されるイメージを皿の上に表現し、独特のネーミングと細心の給仕タイミングで、食す人の記憶に触れるモードスパニッシュを提供。素材本来の旬の姿を食べる人に伝え、質の高い外食空間を形成するとともに、奈良市富雄という地域の知名度向上に貢献している。 奈良近郊の生産者との交流から、ていねいな生産過程を経た本来の季節感に沿う食材を調達。間引き野菜や花など市場に出ずに廃棄されていた食材にも光を当て、生産者との共存を図っている。

深い森のモヒート柑橘とハーブのアペリテポ
【深い森のモヒート柑橘とハーブのアペリテポ】

最初に食前酒とともに出されるのが、藁でスモークされたクロケット。はかない煙とともに日常が消え去り、味わいと語らいのひとときに引き込まれる…そんなプレゼンテーション効果を持つ一皿。

アナゴのフリット ブロコリとグレープフルーツ、ワサビのジェラート「庭の香り」ローズマリーとラベンダー
【アナゴのフリット ブロコリとグレープフルーツ、
 ワサビのジェラート「庭の香り」ローズマリーとラベンダー】

数々の厳選食材に加え、生産者が店舗の庭まで足を運んで育て、調理する直前に川島さんが手ずから摘んだハーブも、四季折々の「庭の香り」として風味を添え、食す人の記憶をくすぐる。

軽く燻した大和の豚 エッセンスクロロフィリアとはしばみオイル
【軽く燻した大和の豚 エッセンスクロロフィリアとはしばみオイル】

フルコースの名称でもある「クロロフィリア」は葉緑素のこと。緑の葉のみを使ったエッセンスソースの彩りが心地よいインパクトを放つ。良質な素材そのものの繊細な味わいを楽しめるよう、焼き、燻しの加減に心を配り、ソースやオイルは味付けというより、素材の旨みを引き出す控え目なパートナーといった趣。

川島 宙
レンガ造りの旧鉄道変電所の建物を生かした大正ロマンの香り漂う店内。案内された瞬間から、川島さんのコンダクトによる“標題音楽”さながらの味わいの物語が始まる。
川島 宙
奈良県葛城市で無農薬、無肥料栽培をする西川和利さんのハッサク畑。木の高さが他の畑のほぼ2倍の5mほどもあり、まさに「みかんの森」。
川島 宙
西川さんは今年から古代米「緑米」の無農薬栽培を始めた。種子消毒も薬剤を使わず温湯で行い、除草剤も一切使わない。この水田風景が川島さんの皿に表現される日も近い。
川島 宙
豚肉やソーセージの供給先である「ばあく」の泉澤ちゑ子さんと、自家農園産の豚を脱骨するご主人の光生さん。奈良県五條市の山中で農場・レストランを展開し、自分たちで作った食材を提供している。
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